特別連載 日本語教科書活用講座② / 日本語 会話の授業 『上級話者への道』 「中級から上級に向けて-上級話者になるための授業と学習」 第2回 会話の授業編-アイスブレイク・ワーク・教師の役割

講師紹介 伊藤とく美 岩谷学園テクノビジネス専門学校日本語科主任教員
『日本語上級話者への道 きちんと伝える技術と表現』共著者


第2回 会話の授業編-アイスブレイク・ワーク・教師の役割


今回は、会話の授業を始める際の留意点やワーク、教師の役割について考えます。

授業に臨む学習者が今どのような状況にあるのか、どんな気持ちでこの場にいるかを知ることが大切です。話しやすくするためのアイスブレイクなどを行って雰囲気作りを心がけましょう。


1.アイスブレイク


授業に参加しよう、話したいという気持ちになってもらうためには、心の扉を開く必要があります。

そのために、学習者の今の状況や気持ちについて話してもらい、全員で聞くことで話す準備を整えます。


例:

教師:皆さん、おはようございます。元気ですか。
私は、今朝、学校へ来る時、道で小さな黄色い花を見ました。
寒いのに頑張って咲いていてすごいなあ、私も一生懸命生きようと思いました 。
皆さんは今どんなことを考えていますか。
今日の気持ちはどうですか。どうぞ教えてください。

林 :私は元気じぁありません。
教師:えっ、元気じゃありません。どうしましたか?
林 :昨日、国へ電話をかけました。おばあさんが病気で入院しました。心配・・・
教師:ああ、おばあさんが病気で、心配なんですね。早く元気になってほしいですね。

ズイ:私は昨日店長にほめられました。うれしかったです。
教師:そう、店長にほめられましたか?よかったですね。どんなことがあったんですか。
ズイ:あのーお客さんが財布を落ち・・落としました。私は財布を拾って・・走って、お客さんにあげました。
カン:ええ?ズイさん、いい人ですね。

学習者の今の状況が少しずつ話され、その場の参加者の心も動いて、
話したい、聞きたいという思いが出てくるのを待ちます。
自分の思いを少しでも口にすることでみんなの話も聞く気持ち、
話したい気持ちがわいてきて会話授業の準備が整います。
学習者の発話に誤用や拙さがある場合、訂正は最小限に抑えます。
出来事や気持ちを伝えたいという思いをまず受け止めて伝え返すことが大切です。
では、アイスブレイクにはどんなものが考えられるでしょうか。

(1)朝の一言
今、私はこんなことを考えています。こんな気持ち、どうしてかというと・・・

(2)今日のニュース発表
皆さんに知らせたい今日のいいニュース・おもしろいニュースなど話してもらい、
質問したり感じたことを伝えたりします。

(3)私の見つけた珍しい物、不思議なことなど発表
珍しいものや不思議なことなどを発表して質問したり感想を話したりします。

(4)伝言ゲーム
グループ、3人~5人程度に分け、短い文を次の人に伝言していきます。
最後の人が聞いた伝言を発表して、正しくはやくできたグループが勝ちです。

例えば
1グループ
「私は、昨日、恋人とイタリアンレストランで食事しました。おいしかったですが、ちょっと高かったです。」

2グループ
「私は、昨日、寮で友達とけんかしました。ユウさんが悪いことを言ったからです。気分が悪いです。」

*レベルに合わせて難易度をつけていくとよいでしょう。
話す準備ができたら、会話の授業に入ります。
まず、
「今日の目標のテーマやスキルについて」どの程度できるのか
ペアワークやグループワークを行って確認しましょう。


2.ペアワークやグループワーク

(1)ペアワーク:二人一組で練習します。

ペアの作り方は、隣同士、前後左右の人、または番号を言って同じ番号同士、

誕生月や好きな季節でペアになる方法などが考えられます。


例:

20名のクラスでは、ペアが10組できます。クラスを半分に割り、

ABのグループ分けをして1から10まで番号を言い、同じ番号でペアを作ります。


教師:

では、これから「物をなくした体験」についてロールプレイをします。

二人一組になってください。

Aさんは「なくした人」Bさんは「警察官」です。

では、まず王さんとタンさんのペアにやってもらいましょう。

発表が終わったらよかったところ、少しわかりにくかったところ、

直した方がいいところを皆さんに言ってもらいます。


*3人一組の場合:

二人が会話やロールプレイを行い、一人は観察者の役割を取ります。

よかったところや直した方がいいところを伝えます。


学習者同士で感想を伝え合うとき、「いいところを言ってください」

「私ならこう言いますという例を言いましょう」などと約束することが大切です。

ロールプレイについて、学習者にとって実際とは違う立場の役割をする必要はないという

考え方もあるかもしれません。

例えば「警察官」「駅員」といった役割です。

ただ、自分とは違う立場の役割をやってみてどうだったか感想を話すことで、

気づくことも理解できることも多いと思います。

(2)グループワーク

:クラスの人数によって、好きな動物・花・季節・食べ物などでグループになることもできます。

3人~5人程度のグループで与えられたタスクを行います。

みんなで話し合い、発表する人、聞く人など役割を交代しながら行います。


例:

自分を印象付ける自己紹介をグループで一人ずつ発表し、

聞いた後で印象的だった内容について伝え合う。

3.会話の授業における教師の役割は?

(1)学習者の発話意欲の喚起

学習者が話したい、聞きたいと思える雰囲気と場を作る。

そのためには、真のコミュニケーションが行われる授業を心がけます。

できるだけ学習者に関わりがある事実や内容で進めましょう。


(2)会話の授業のテーマや目標、方法の提示

今日は何について話し、何ができるようになるのか、

その方法はどのようなものであるのかを明確に伝えることが必要です。

説明や活動の指示、語彙と表現や構成について具体的に示します。


(3)発話を受け止め、フィードバック

学習者の話のキーワードを繰り返して確認し、気持ちを日本語にして伝えます。

例:

陳さん:国にいる恋人と電話で話して、写真を見て、昨日の夜、眠れませんでした。

教師 :恋人と話して、写真を見て、眠れなかったのですね。恋人に会いたいんですね。


(4)発話の評価

言いたいことをちゃんと伝えているか。学習者の発話のレベルをチェックします。

どんなことができているか評価し、改善点などを具体的に伝えます。


(5)全体と個人の様子を良く見てサポート

全員が参加できているか、一人一人学習者をよく見ることが大切です。できるだけ

いろいろな人と話すように工夫します。

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