もしも…あなたが外国人に「日本語を教える」としたら
ちょっとした工夫で「日本語を教える」ことを外国人へのプレゼントにできることを説いた実用的な読み物です。第1章、第2章は授業準備と授業の実況中継で、初めて日本語を教えることになった3人の登場人物の授業の試行錯誤を通し、日本語教育の初歩と指導のポイントを具体的に解説しています。第3章では授業準備、導入などから復習まで授業の流れにそって「教え方の枠組み」を解説しています。第4章「扉の向こうへ」では日本語教育の世界を概観しています。
第1章「解説:外から眺める日本語と日本文化」、第2章「指導のポイント:授業中は冷静な自己モニターを」など、日本語を教えることが「外国人へのプレゼント」になり、教える側にとっては日本文化や日本語への自己モニターになることを著者の経験は語っています。
目次
外国語としての日本語に対峙する 林 望
まえがき
第一章「いきなり先生」二日間の準備
一、日本語は難しいか易しいか
解説 日本語を勉強する外国人の数は政令指定都市三つ分
二、経験もないのに教えることになった三人のきっかけは
ケース1 平野さん(主婦)の場合
ケース2 今井さん(会社員)の場合
ケース3 河田さん(大学生)の場合
解説 日本語を勉強する人たちにはどんな人がいるのか
三、教える準備~100円ショップで教材調達~
解説 教えるのに要るもの、要らないもの
四、教科書の選び方
解説 教科書に書かれていること
五、相手が知りたいことを教える
解説 「拍」と「音」と「レディネス分析」
六、日常生活に役立つ「サバイバル日本語」
解説 外から眺める日本語と日本文化
七、日本語だけで教えることができるのか
解説 何語で教えたらいいのか~直接法と間接法~
八、小さな工夫~文型のカード~
解説 授業を支える教材と教具
CASE STUDY
●[ケーススタディ]
教科書の「第1課」で何を教えるのか
―「みんな日本語 初級Ⅰ」を例に
第二章「いきなり先生」授業の実況中継
一、平野さんの教え方
【実況中継―1】玄関先でショック!
指導のポイント―1授業で迷った時の基本方針
【実況中継―2】「音」を教える
指導のポイント―2アクセント入門
【実況中継―3】発音のモデル登場~単語から文へ~
指導のポイント―3文字より音にこだわること
【実況中継―4】手作りのカード教材で教える
①日本語は文末に「か」をつけると疑問文
②第三者を示す「あの人」の教え方
③「誰ですか」の教え方
指導のポイント―4媒介後の使い方・絵の用い方・間違いの直し方
【実況中継―5】最後にことばのゲームでまとめる
指導のポイント―5アクティビティの用い方
二、今井さんの教え方
【実況中継―6】準備したことが適用しない
指導のポイント―6少しできる学習者を教える場合
【実況中継―7】突然の要望「漢字を習いたい」
指導のポイント―7外国人にとって難しい日本語の表記と単語を改めて考える
①単語の難しさ
②単語の書き表し方
③単語のグループ
【実況中継―8】即席「漢字教室」
指導のポイント―8漢字の数え方
【実況中継―9】「誰の」「私の」を教える
指導のポイント―9問答による進め方
三、河田さんの教え方
【実況中継―10】英語による説明、スタート
指導のポイント―10理想的な授業ポジションとは
【実況中継―11】単語の入れ替えによる文作り
指導のポイント―11課を入れ替えるのは独創か独善か
【実況中継―12】平叙文から疑問文へ
指導のポイント―12分かりやすい文の説明とは
【実況中継―13】失敗
指導のポイント―13授業中は冷静な自己モニターを
【実況中継―14】これ、何? あなた、誰?
指導のポイント―14成人学習者を子供扱いしてしまうこと
第三章 教え方の枠組み
一、授業の復習
・三人の授業と実際の教育現場との関連
・教え手の役割とは
・学習者が望む授業のあり方
二、コースデザインと授業の「流れ」
・コースデザインとは
・授業前半の流れ
①ウォーミングアップ
②復習
③導入
・授業後半の流れ
①ドリルとアクティビティ
②自己表現の必要性
③まとめとクーリングダウン
・教えたあとで ~技量をあげる三つの方法
三、三大教授法
・文法訳読法
・オーディオ・リンガル・メソッド
・コミュニカティブ・アプローチ
四、コミュニカティブ・グラマーとその教え方
・文法知識は必要か
・文型文法とプロトタイプ・カテゴリー
・基本文型と教え方の順番
五、「理解すること」を理解する
第四章 扉の向こうへ
一、外国人のための扉、日本語教師のための扉
二、日本人教師のための扉とは
三、職業としての日本語教師とは
四、ステップ・アップの前に考えること
五、空論でないステップ・アップの方法
・新たな仕事の働きかけ
・新規プロジェクトへの参画
・日本語教育の「周辺領域」
・日本人のための日本語教育
六、海外で日本語を教えられるのか
七、海外で教えるにあたって
八、持っていきたい六冊プラス1
九、政府派遣の日本語教師
十、民間派遣の日本語教師
十一、派遣ボランティアたちへのエール
十二、日本語のプレゼント
あとがき