特別連載 日本語教科書活用講座⑦ / 『みんなの日本語初級』練習B、Cを生かした教室活動「わかった」「知ってる」から「使う」教室活動 第三回 練習C発展その2 「会話の続きを考える」
翰林日本語学院 教務主任 岸根彩子
「相手が話している意味はわかるけれど、自分が言いたいことを言うのは難しい。」「急に話しかけられるとうまく返答できない。」という学生の声を聞きます。教科書に書かれた会話とは違って、実際のコミュニケーションでは次に相手が何と言うかはわかりませんし、相手の発話によって、次に自分が言わなければならないことや言いたいことは次々に変わっていきます。2010年に日本語能力試験が改定され、その新しい日本語能力試験の聴解に新しく即時応答という問題形式が加わりました。これは「質問などの短い発話を聞いて、適切な応答が選択できるかを問う」問題です。より実際のコミュニケーションに近い形で学生の能力が測られるわけです。
では、教室内ではどんな練習ができるでしょうか。
わたしが実践しているのは、『みんなの日本語初級』練習Cの会話の最後の部分をアレンジする方法です。
例1 11課 練習C-1
A:いらっしゃいませ。 B:サンドイッチを二つください。 A:かしこまりました。 |
まず、教科書の通りに練習します。
練習Cの場面を絵で導入し、必要に応じて新出の語彙を確認します。その後は同じく絵を使ってペア練習で学生達にどんどん発話をさせていきます。その際、教師は教室内を回り、その日に導入・練習をした文型や助詞などが正しく言えているかどうかをチェックしたり、イントネーションにも注意を向けさせていきます。
そして最後に確認の意味でもう一度絵を見せて、学生と教師で会話を行います。その際、最後の「かしこまりました。」を変えます。
そして最後に確認の意味でもう一度絵を見せて、学生と教師で会話を行います。その際、最後の「かしこまりました。」を変えます。
ポイントは学生に予告なく行うことです。
そこで、何と言ったらいいかをその場で考えさせることができるのです。
そして学生達からの発話を引き出した後、例としていくつかの表現を皆で確認します。
そこで、何と言ったらいいかをその場で考えさせることができるのです。
そして学生達からの発話を引き出した後、例としていくつかの表現を皆で確認します。
例 「あのう、一つじゃなくて二つです。」 「いいえ、二つお願いします。」 |
学生に最後の部分を考えさせることもあります。
例2 44課 C-2
A:このテーブル、いいですね。 B:ええ、これは最近人気があります。大きさが調節できて使いやすいんです。 A:そうですか。じゃ、これにします。 |
教科書の会話では買うことを決めたAさんですが、実際にはいいと思ったけれど買わないということもあります。そんなときどう言ったらいいのか、学生に考えさせます。学生に提示している練習Cの絵カードを手書きで変えたものを見せて考えさせ、その後クラスで確認をします。もちろん絵でなくて口頭で状況を説明してもいいと思います。
また練習Cを使って会話の続きを考えさせる練習もできます。
A:
実際の会話ではAさんが何も言わずに電話を切ることはありません。
練習の最後の確認の際に会話文を学生に提示し、Aさんの台詞があることを下線で提示すれば、学生は最後にAさんが何か言わなければならないとわかります。
このような練習を続けていると、学生が積極的に自分で文を考えるようになり、受身ではなく積極的な姿勢で練習に取り組みますし、急に「こんなときどう言うか」を求められるため、授業に集中し、いい緊張感も生まれます。
ただ、若い学生達ばかりですとおもしろい会話を作ることを優先してしまい、結果的に正確さに欠けた練習になってしまうことがあるので教師側の意識的なコントロールは必要だと思います。
練習Cは使用場面・発話の目的がはっきりとしていてわかりやすく、会話の長さも短めのためアレンジするのに適当です。発話の状況や練習に出てくる文型や語彙の意味がわかっている練習Cを使うからこそアレンジした箇所にポイントを絞ることができます。
また、他から持ってきたものではなく普段使っている教科書を使うことで学生が教科書を見たときに「この場合だったらどう言うのだろう」「逆のことを言うときはどう言えばいいのか」と自分で考える習慣がつくことにも繋がると考えています。
例3 50課 練習C-3
A:はい、IMCでございます。 B:田中と申しますが、ミラーさんはいらっしゃいますか。 A:ミラーはただいま出かけておりますが… B:そうですか。じゃ、またお電話します。 |
A:
実際の会話ではAさんが何も言わずに電話を切ることはありません。
練習の最後の確認の際に会話文を学生に提示し、Aさんの台詞があることを下線で提示すれば、学生は最後にAさんが何か言わなければならないとわかります。
このような練習を続けていると、学生が積極的に自分で文を考えるようになり、受身ではなく積極的な姿勢で練習に取り組みますし、急に「こんなときどう言うか」を求められるため、授業に集中し、いい緊張感も生まれます。
ただ、若い学生達ばかりですとおもしろい会話を作ることを優先してしまい、結果的に正確さに欠けた練習になってしまうことがあるので教師側の意識的なコントロールは必要だと思います。
練習Cは使用場面・発話の目的がはっきりとしていてわかりやすく、会話の長さも短めのためアレンジするのに適当です。発話の状況や練習に出てくる文型や語彙の意味がわかっている練習Cを使うからこそアレンジした箇所にポイントを絞ることができます。
また、他から持ってきたものではなく普段使っている教科書を使うことで学生が教科書を見たときに「この場合だったらどう言うのだろう」「逆のことを言うときはどう言えばいいのか」と自分で考える習慣がつくことにも繋がると考えています。