中上級を教える人のための 日本語文法ハンドブック
『初級を教える人のための 日本語文法ハンドブック』に続く、中上級の文法解説書です。中上級を教えるのにほしかった知識とその「種明かし」が詰まった1冊です。
中上級の文法を断片的な知識の羅列に終わらせず、個々の文法項目を体系的に整理し解説しています。各項目ごとに「これだけは」「もう少し」「もう一歩進んでみると」の3段階に分けて解説し、経験の浅い教師から、ベテラン教師までのニーズに対応しています。
目次
まえがき
本書の使い方
§1.指示詞
1.対話における文脈指示
2.文章における文脈指示
2-1.「これ」と「それ」
2-2.「この」と「その」(1)
2-3.「この」と「その」(2)
2-4.「今」や「ここ」を指す場合
3.指すものを受けるときの形
3-1.「そう」
3-2.「こんな」類と「こういう」類
4.指すものが後から出てくる場合
§2.格助詞(1)-対象-
1.に対して-動作・感情・態度が向けられる対象を表す表現-
2.について、に関して、をめぐって-関係する対象を表す表現(1)-
3.にまつわる、にかかわる-関係する対象を表す表現(2)-
コラム 文法化
§3.格助詞(2)-手段、原因、根拠、情報源-
1.によって、を通じて、をもって-手段を表す表現-
2.で、によって、から、のせいで、のおかげで、のため(に)、に、
につき、とあって、ゆえ(に)-原因・理由・根拠を表す表現-
3.によると、によれば-情報源を表す表現-
4.に沿って、に即して、に基づいて-基準を表す表現-
§4.格助詞(3)-状況-
1.において、にて、にして、でもって、をもって
-空間的・時間的な位置や境界を表す形式
2.にかけて、にわたって、を通じて
-空間的・時間的範囲を表す形式-
3.によって、次第で、いかんで、に応じて、とともに
-状況に応じた変化・対応を表す形式-
4.を問わず、にかかわらず
-多様な状況に対して一定であることを表す形式
5.なくして、なしに、をぬきにして、なしで
-非存在的状況を表す形式-
6.XをYに-付帯状況を表す従属節に相当する表現-
コラム 対照研究(1)-(複合)格助詞-
§5.格助詞(4)-その他の形式と一般的な特徴-
1.として、にとって-資格・立場-
2.他の格で表わされる名詞句の順序や範囲を表す「から」と「まで」
3.複合格助詞の様々な形
4.のこと-名詞の性質を変えるために用いる接辞-
コラム 連体と連用
§6.並列助詞
1.~と~、および、ならびに-全部列挙の形式-
2.~に~-累加や取り合わせを表す形式-
3.~や~(など)、~とか~とか、~やら~やら、~だの~だの
-部分列挙の形式(1)-
4.~といい~といい、~といわず~といわず、~であれ~であれ、
~にしても~にしても、~にせよ~にせよ、~にしろ~にしろ、
~でも~でも-部分列挙の形式(2)-
5.~か~(か)、~なり~なり、または、あるいは、もしくは
-選択的列挙の形式-
コラム 気づかれにくい方言の文法(1)
§7.時間を表す表現(1)-テンス-
1.主節のテンスの注意すべき用法
2.発見、再認識(想起)を表すタ形
3.静的述語のテンス
4.モダリティ形式のタ形
5.従属節のテンス
6.名詞修飾表現のテンス
§8.時間を表す表現(2)-アスペクト-
1.テイル形
1-1.テイル形の基本的用法
1-2.経験・経歴を表すテイル形
1-3.テイル形と「~たことがある」
1-4.完了、反事実を表すテイル形
2.その他のアスペクト形式
2-1.直前・開始を表す形式
2-2.継続を表す形式
2-3.終結・直後を表す形式
3.~ところだ
§9.立場を表す表現(1)
-直接受身文・「YはXがV」型構文・相互文-
1.直接受身文と間接受身文
2.能動文と直接受身文の使い分け
2-1.動作の受け手(Y)が有情名詞の場合
2-2.動作の受け手(Y)が無情名詞の場合
3.受身と似た意味を持つ「[名詞]を[動詞]」表現
4.「YはXがV」型構文-目的語の主題化―
5.二者の間で相互に行われる動作-相互文-
コラム 「なる」と「する」と「させる」
§10.立場を表す表現(2)-間接的な影響を表す表現-
1.間接受身文
2.持ち主の受身
3.受身文と「~てもらう」文・「~てくれる」文
4.「XはYがV」型構文
§11.立場を表す表現(3)-使役文・使役受身文など-
1.様々な使役文
1-1.使役文の基本的用法
1-2.原因を主語にした使役文
1-3.責任者を主語にした使役文
1-4.Yの動作や変化を表す使役文
1-5.その他のやや特殊な使役文
2.使役を含む表現
2-1.使役受身文
2-2.~させてやる、~させてくれる、~させてもらう
3.使役文と他動詞文
3-1.形の対応
3-2.使役文と他動詞文の用法の違い
4.使役と似た意味を持つ「[名詞]を[動詞]」表現
§12.自動詞と他動詞
1.自動詞と他動詞の使い分け
1-1.動作主(Y)の存在の有無
1-2.動作の過程の有無
2.再帰的な他動詞文など
3.自動詞文と類似した意味を持つ表現
3-1.自動詞文と他動詞の受身文
3-2.自動詞文と他動詞文の可能文
4.複合動詞と動詞の自他
§13.授受の表現
1.授受動詞とその周辺の表現
2.「(~て)くれる」と「(~て)もらう」の使い分け
3.授受の補助動詞を使うとき・使わないとき
4.授受の補助動詞表現の恩恵を表さない表現
4-1.「~てやる・~てあげる」文の恩恵を表さない用法
4-2.「~てくれる」文の恩恵を表さない用法
4-3.「~てもらう」文の恩恵を表さない用法
コラム 対照研究(2)-授受の表現-
§14.可能と難易の表現
1.可能はどんなときに使うのか・使わないのか
2.可能形の状態性
3.~得る(うる・える)-可能性を表す表現-
4.不可能を表す表現
5.困難を表す表現
コラム 格の交替
コラム ヴォイス
§15.引用表現
1.動詞型引用表現
1-1.基本形
1-2.可能形
1-3.受身形
2.名詞型引用表現
§16.比較の表現
1.より、に比べてetc.-二つの事物を比較する表現-
2.一番、~ほど~はないetc.-三つ以上の事物を比較する表現-
3.にしては、わりに(は)-基準・標準と比較する表現-
§17.話し手の気持ちを表す表現(1)-判断-
1.だろう、まい、と思うetc.(の)ではないかetc.
2.はずだ、にちがいない、はずがない、わけがないetc.
3.かもしれない、恐れがあるetc.
4.そうだ、という、ということだetc.
§18.話し手の気持ちを表す表現(2)-義務・勧め・許可・禁止など-
1.べきだ
2.ものだ
3.ことだ
4.その他の表現
4-1.ざるをえない、ないわけにはいかない、必要がある
-「なければならない」との違いが問題になる表現-
4-2.~といい、~ばいい、~たらいい、~ほうがまし
-「ほうがいい」との違いが問題になる表現-
4-3.必要はない、までもない
-「なくてもいい」との違いが問題になる表現-
§19.話し手の気持ちを表す表現(3)-意志-
1.意向形(「しよう」)、ル形(「する・しない」)
2.(よ)うとする(意向形+とする)
3.つもりだ
4.ことにする
コラム 対照研究(3)-「いっしょに行きたいですか」-
§20.話し手の気持ちを表す表現(4)
-感嘆・詠嘆、感情の強調など-
1.なんと~、どんなに/何+助数詞~、~とは/なんて
2.ものだ、ことだ
3.てしかたがない、てたまらない、かぎりだetc.
コラム 気づかれにくい方言の文法(2)
§21.話し手の気持ちをを表す表現(5)-疑い、確認-
1.質問を表す表現
2.確認・聞き手の知識の活性化を表す表現
2-1.だろう
2-2.ではないか
2-3.ね
3.疑い・不確実さを表す表現
3-1.か
3-2.かな、かしら
3-3.だろうか
3-4.のではないか
コラム 規範文法と記述文法
§22.話し手の気持ちを表す表現(6)-終助詞-
1.よ
2.ね
3.よね
4.なあ、わ、ぞ、っけ、の
§23.関連づけ
1.「のだ」の様々な用法
1-1.「のだ」による関連づけ(1)-理由、解釈-
1-2.「のだ」による関連づけ(2)-言い換え-
1-3.「のだ」による関連づけ(3)-発見-
1-4.「のだ」による関連づけ(4)-再認識-
1-5.「のだ」による関連づけ(5)-先触れ-
1-6.「のだ」による関連づけ(6)-前置き-
1-7.関連づけを表さない「のだ」-命令、認識強要-
2.「わけだ」の様々な用法
2-1.関連づけを表す「わけだ」
2-2.「わけだ」を含む否定表現
3.「のだ」と「わけだ」
3-1.肯定文の場合
3-2.疑問文の場合
3-3.否定文の場合
コラム 従属節の文らしさ
§24.否定と疑問の表現
1.否定の表現
1-1.基本的な否定
1-2.部分否定
1-3.二重否定
1-4.その他の否定
2.疑問の表現
2-1.通常の疑問文
2-2.前提を持つ疑問文
2-3.否定疑問文
§25.「は」と「が」
1.「は」と「が」の基本的な違い
2.「は」の用法(1)-主題-
3.「は」の用法(2)-対比-
4.「が」の用法(1)-中立叙述-
5.「が」の用法(2)-総記-
6.「は」と「が」と「ゼロ」
7.述語と格関係を持たない「は」
8.複文における「は」と「が」の係り方
§26.とりたて(1)-主題、対比-
1.とりたて助詞概観
2.主題を表す表現
2-1.は、ならetc.-主題を表すとりたて助詞-
2-2.とは、というのは-聞き手が知らないものを説明するための
表現-
2-3.といえば、というと、といったら、はというと、なら
-関連づけて示すための表現
2-4.だが、のことだが、ということだが-主題的な前置き表現-
コラム 対照研究(4)-「は」と「が」-
§27.とりたて(2)-限定、付け加え、数量の見積もり
1.限定を表すとりたて表現
1-1.のみ、に限り、にすぎない-「だけ」とほぼ同じ意味で交換
できる限定表現
1-2.だけだ-「だけ」を含むヴァリエーション-
1-3.~さえ…ば、に限って、を限りに、ならでは(の)、にかけ
ては、はともかく-「だけ」と同じ意味で交換できない限定
表現-
1-4.~だけしか…ない、~をおいてほかにない
-「だけ」とは交換できないが「しか」とほぼ同じ意味で交
換できる限定表現-
2.こそ-際立たせるために使うとりたて助詞-
3.だけでなく、ばかりでなく、のみならず、ばかりか、はもちろんの
こと、に限らず、にとどまらずetc.-付け加えを表すとりたて表
現-
4.数量の見積もり-「数量詞+は」「数量詞+も」-
コラム 条件と主題
§28.とりたて(3)-評価-
1.さえ-極端なものを取り立てて意外な気持ちを表したい場合-
2.でも-極端なものを取り立ててその他の普通のものを暗示したい場
合-
3.まで-意外な要素を付け加えたい場合-
4.など、なんて-検討の範囲を外れていることを表したい場合 (問題
外、当然)-
5.くらい-「低レベルだから当然最も可能性が高い」と言いたい場
合-
6.評価を表すとりたて助詞の使い分け
6-1.「さえ」 vs 「も」
6-2.「さえ」 vs 「でも」
6-3.「さえ」 vs 「まで」
6-4.「など」 vs 「くらい」
7.数量詞を取り立てて評価を表すとりたて表現
7-1.多い(大きい)という評価を表す
7-2.少ない(小さい)という評価を表す
8.とりたて助詞「も」の派生的用法
8-1.意外さを表す「も」の詠嘆的用法
8-2.「も」の婉曲的用法
8-3.文副詞における「も」
§29.名詞修飾表現
1.「という」を含んだ名詞修飾表現
2.制限的名詞修飾と非制限的名詞修飾
3.非制限的名詞修飾
3-1.意味・用法
3-2.談話における働き
4.様々な名詞修飾表現
4-1.場面表す名詞修飾節+「ところ」
4-2.被修飾名詞が名詞修飾節の中にある名詞修飾表現
§30.複文(1)-条件-
1.仮定条件を表すもの
2.反事実的条件を表すもの
3.確定条件を表すもの
4.事実的条件を表すもの
§31.複文(2)-理由・目的-
1.理由を表す基本的な表現
2.「から」を含む理由を表す表現とその周辺
3.理由を表すその他の表現
4.目的を表す表現
§32.複文(3)-逆接・対比-
1.「けど」類-事実的逆接<客観的、対比的>-
2.対比の表現
3.「のに」類-事実的逆接<主観的>-
4.「ても」類-仮定的逆接-
§33.複文(4)-「~て」・付帯状況・相関関係など-
1.~て
2.~ないで、~なくて、~ずにetc.
3.~ながら、~つつ、~ついでにetc.
4.~だけでなく、~ばかりでなく、~ばかりかetc.
5.~ば~ほど、~につれて、~にしたがってetc.
§34.複文(5)-時間-
1.~とき(に)、~あいだ(に)、~うちにetc.
2.~と同時に、~た(か)と思うと、~か~ないかのうちにetc.
3.~てから、~てはじめて、~てからでないと、~た上で、~て以来
etc.
§35.接続詞
1.順接
1-1.だから、それで、そのためにetc.-[原因・理由-帰結]
型-
1-2.すると、それならetc.-[条件-帰結]型-
2.なぜなら、というのはetc.-理由述べ-
3.けれども、しかし、それなのにetc.-逆接-
4.つまり、要するに、例えばetc.-言い換え・例示-
5.そして、それから、それにetc.-並列・添加-
6.なお、ただし、ただetc.-補足-
7.または、それとも、etc.-選択-
8.一方、逆に、反対に-対比-
9.ところで、それでは、さてetc.-転換-
10.このように、こうしてetc.-総括-
§36.待遇表現
1.待遇表現の全体像
2.初級で学習した敬語への補足的事項
2-1.素材待遇
2-2.対者待遇
3.丁寧に話すための運用的な方略
コラム 運用論(pragmatics)
§37.話しことばにかかる表現形式
1.名詞句の表し方
2.無助詞
3.その他の現象
§38.文体
1.文体とは
2.文体の混交(1)-従属的な文の場合-
3.文体の混交(2)-独立した文の場合-
4.従属節の従属度と丁寧形
§39.省略
1.名詞句の省略(1)-1、2人称の場合-
2.名詞句の省略(2)-3人称の場合-
3.助詞の省略(→§37)
§40.名詞・代名詞
1.代名詞
1-1.1人称代名詞(主語を表す場合)
1-2.2人称代名詞(主語を表す場合)
1-3.3人称代名詞(人を表す場合)
2.名詞
2-1.相対性を持つ名詞
2-2.親族を表す名詞
§41.接辞
1.主に品詞を転換させる働きをする接辞
2.主に意味を加えたり変化させたりする働きをする接辞
2-1.~たち、~ども、~方、~ら、諸~-複数-
2-2.~人、~者、~家、~員、~士、~師、~屋-人-
2-3.~賃、~費、~金、~料、~代-金銭-
2-4.~式、~風、~流-様式-
2-5.~向け、~向き、~用-使用者・使用目的-
2-6.~中、~時、~代-時間-
2-7.~だらけ、~まみれ、~ずくめ-様態-
2-8.~げ、~がち、~気味、~っぽい-傾向-
2-9.真~、大~-強意-
2-10.その他(再~、当~、本~)
3.非生産的な接辞
コラム ことばの変化
§42.漢語
1.漢語の文法的分類
2.サ変動詞
2-1.基本的な性質
2-2.自動詞用法と他動詞用法
2-3.名詞化
3.重要な接辞
3-1.品詞を変える接辞
3-2.否定を表す接辞
§43.文法と音声の関係
1.文の意味とイントネーション
1-1.基本的なイントネーション
1-2.文のタイプとイントネーション
1-3.終助詞の種類とイントネーション
2.情報の新旧とプロミネンス
2-1.基本的なプロミネンス
2-2.語順転換とプロミネンス
2-3.対比とプロミネンス
2-4.制限的修飾/非制限的修飾とプロミネンス
コラム 日本語は特殊な言語か
コラム 文と文のつながりの二つのパターン
あとがき
中上級を教える人のための 日本語文法ハンドブック
-
価格: 2,640円(税込)
電子書籍: 価格は各電子書店にてご確認下さい。
- 判型: A5
- 頁数: 599頁
- ISBN: 9784883192014